【茶道を知る5】茶碗の拝見
茶会において、客が道具を見ることを「拝見」といいます。亭主が茶会を催すにあたり、吟味して選んだ道具を、客が鑑賞する時間が許されています。拝見を通して、亭主と客の会話も生まれ、茶会のテーマや道具に対する情報・思い入れなどを知ることができます。
ただし、茶会の場合は、正客(しょうきゃく)のみが亭主に尋ねることができるので、注意が必要です。
今回は、茶碗の拝見について、その作法と拝見のポイントをまとめました。
茶碗の拝見のタイミングは、お茶をいただいた直後になります。
お茶のいただき方はこちらのページをご覧ください。
1. 縁外(へりそと)に茶碗を置き、膝前に両手をついて茶碗全体の景色を眺めます。
まずは茶碗の形(なり)や色を鑑賞します。
抹茶茶碗にはさまざまな種類の焼き物があります。基本的な焼き物の特徴を知っておくことで、鑑賞をより深めることができます。
日本古来の焼き物「六古窯(ろっこよう)」の抹茶茶碗についてはこちらのページに紹介していますので、興味のある方はご覧ください。
2. 肘を膝につき、低い位置で両手でやさしく茶碗を持ち、茶碗の細部を見ます。
茶碗を指でゆっくり回しながら鑑賞し、茶碗の表面の質感や手のひらでのフィット感なども味わいます。
茶碗の内側や裏側も鑑賞します。
3. もう一度茶碗を縁外に置いて、全体を眺めます。
拝見が終わったら、茶碗を回して正面を向こう側(亭主側)に向けて縁外に返します。
茶碗の拝見は、ポイントを知っておけば、より深く味わうことができます。
茶碗の「形」の鑑賞のポイント
茶碗には、部位によって名前が付けられています。それぞれを見ることで、その茶碗の特徴をとらえることができます。
口造り(口縁)・・・口をつける部分です。口縁の厚みや縁の反り具合【端反り(はぞり・はたぞり)】でお茶の味まで変わるという影響の大きな部分です。さらに、茶碗全体の印象も左右します。
縁が波打っているものは「山道」と呼びます。
胴・・・茶碗の外側の口造りから中ほどまでの部分です。その角度によって筒茶碗、平茶碗など茶碗の形が決まります。
腰・・・胴に続くその下の部分で、高台手前の張り出している部分までを指します。その形が、茶碗の持ちやすさや手になじむかどうかなどに影響します。
高台(こうだい)・・・茶碗の底に付けられた台座部分です。高台の削り方により大胆、繊細などの表情が出ます。
高台のつくりには、よくある輪っかの形の「輪高台」、輪高台の一箇所を削り取った「切り高台」、輪っかを縦横十字に削り取ったりする「割り高台」など、様々な種類があります。
高台の内側や外側には、落款・刻印があることがあります。作家や窯元のサインであり、その出所や時代を知ることができます。
見込み・・・茶碗の内側全体のことです。次の3か所が鑑賞ポイントです。
茶溜り(ちゃだまり):器の底にある薄いくぼみのことです。くぼみの大きさは大小いろいろで、茶溜りのない場合もあります。お茶を飲んだ後のわずかに残ったお茶が茶溜りに残った状態も、茶碗の景色となります。
茶巾刷り(ちゃきんずり):茶巾で口縁を拭く時に、茶巾が当たる部分です。
茶筅刷り(ちゃせんずり):抹茶を点てる時に、茶筅の当たる部分です。茶碗の腰のあたりです。茶筅で茶を点てやすい曲線や深さがポイントです。
茶碗の「色」「質感」の鑑賞のポイント
ろくろ目、へら削り、釉薬の景色や絵付けなどが見所となります。
焼き物の種類によって、色や質感が大きく異なりますので、その特徴を確認しながら鑑賞しましょう。
写真だけではわからない質感や茶碗を持った時の感触などを体験できるチャンスですので、じっくりと味わってみましょう。
茶道では、茶碗のヒビも、美のひとつとして鑑賞します。「金継ぎ」といって漆や金を用いて割れた部分を修復する技術があります。その修復した跡も含めて、全体を「景色」と呼んで鑑賞します。